人材育成・社会貢献
ELSI Forum 2024「ワークプレイスのための『社会技術』:働く場に持ち込まれる新規技術とそのELSI」を開催しました。
2025年1月24日に、ELSI Forum 2024「ワークプレイスのための『社会技術』:働く場に持ち込まれる新規技術とそのELSI」を開催しました。
大阪大学社会技術共創研究センター(通称、ELSIセンター)は、学内外の研究者や組織と連携しながら、「社会技術」を多様なステークホルダーと「共創」する、「共創研究プロジェクト」を設立当初から実施してきました。
ELSI Forumは、ELSIセンターと共創するパートナー同士をつなぐ場として、年に1回開催しているものです。今回は、ELSI Forum 2022「『社会技術』を生み出す:ビジネスとアカデミアの共創実践」、ELSI Forum 2023「『社会技術』の作法を作る:企業の研究・イノベーションをレスポンシブルにするには」に続いて、3回目の実施になります。
ELSI Forum 2024では、複数の共創研究プロジェクトにおいて、共通の関心として浮かび上がってきた「ワークプレイス」に関連するプロダクト・サービス特有のELSIをテーマに据えました。当日は、登壇者やELSIセンター関係者を含め33名が会場に集い、活発な意見交換が行われました。
<イベント概要>
■ 開催日時:2025年1月24日(金)13:30〜17:00
■ 会場:大阪大学中之島センター 5階
■ 主催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
■ 協力:大阪大学COデザインセンター
■ 後援:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
■ 開催案内ページはこちら:https://elsi.osaka-u.ac.jp/contributions/3384
ELSI Forum 2024は、2部構成で実施しました。第1部では、ELSIセンターとの共同研究を進めている企業側パートナーからの事例紹介、また、ELSIセンター研究者による話題提供が行われました。これを踏まえた第2部では、5つのグループに分かれてアカデミア・産業界からの参加者での情報交換を行いました。
まず、大阪大学ELSIセンター 鈴木径一郎 特任助教から、ELSI Forumの目的や進め方の説明があり、続いて、大阪大学ELSIセンター 岸本充生 センター長から、今年度のテーマ「ワークプレイスに導入される新規科学技術のELSIに注目する」に関する趣旨説明がありました。
以下、講演スライド(PDF)も合わせてご覧ください。
趣旨説明
「ワークプレイスに導入される新規科学技術のELSIに注目する」(PDF: 1.4MB)
岸本 充生(大阪大学ELSIセンター センター長)
岸本センター長からは、ワークプレイス(職場)において行われているサーベイランスやモニタリングが、近年のAIの発展やリモートワークの拡大という社会的な状況の変化にともなって、どのように変化をしつつあるのか、また、関連する世界の動向はどのようになっているのか、といった説明がありました。これらの状況を踏まえて、このELSI Forum 2024で議論をしたい論点が提示されました。
事例紹介
「生成AI利活用におけるガバナンス・ELSIリスク対応に向けて」(PDF: 3.6 MB)
関口 俊一(三菱電機株式会社 AI戦略プロジェクトグループ Chief Expert)
関口氏からは、三菱電機の中で進められているAIガバナンスの取り組みについて、また、現在ELSIセンターと進めている共創研究プロジェクト「生成AIユースケースに対するリスク評価とその対策」について、ご紹介いただきました。今後、AIシステムに対するリスクマネジメントプロセスの具現化や、リスクマネジメントを担う人材育成の強化が課題であるということが説明されました。
話題提供
「アバターロボットを用いた働き方と法・政策」(PDF: 711 KB)
赤坂 亮太(大阪大学ELSIセンター 准教授)
赤坂准教授からは、ムーンショット型研究開発事業「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」の一環として進めてきた、『アバターロボットを用いた働き方の導入ガイドライン2024』の紹介や、アバターロボットを用いて働く労働者を雇い入れる際に関わる法律やその解釈についての説明がありました。
話題提供
「職場における監視にまつわる倫理的な課題」(PDF: 1.7 MB)
長門 裕介(大阪大学ELSIセンター 特任助教)
長門特任助教からは、職場における監視技術に関する文献調査を踏まえ、倫理的な課題に関する論点が提示されました。特に、職場文化への影響を考えるべきなのではないか、といった提案もなされました。
話題提供
「職場における監視の背景とその影響」(PDF: 2.2 MB)
カテライ アメリア(大阪大学ELSIセンター 特任助教)
カテライ特任助教からは、職場における監視のルーツ、関連技術が導入されてきた背景などの説明がありました。また、その技術の一事例として、顔認証技術が用いられた場合の課題について複数の文献で指摘されている論点が紹介されました。
第1部で紹介された事例などを参考にしながら、第2部では、5つのグループに分かれて意見交換を行いました。グループ内では、実際に各企業内で行われている「職場監視」的な取り組みや受容の状況なども共有され、参加者の具体的な体験から、ワークプレイス特有のELSIについての解像度を一段と高めた議論が行われました。重たいテーマにも関わらず、ELSIという共通の課題意識でつながった参加者の、共創的で和気藹々とした様子が印象的でした。
第2部終了後のネットワーキングの時間には、「有益であるだけでなく、エンカレッジされる会であった」という趣旨のコメントが多く聞かれました。今後もELSI/RRIの実践に取り組んでいる多様な共創パートナー同士をつなぐ取り組みを継続していきます。