人材育成・社会貢献
ELSI Forum 2023「『社会技術』の作法を作る:企業の研究・イノベーションをレスポンシブルにするには」を開催しました。
2024年1月12日に、ELSI Forum 2023「『社会技術』の作法を作る:企業の研究・イノベーションをレスポンシブルにするには」を開催しました。
大阪大学社会技術共創研究センター(通称、ELSIセンター)は、新規科学技術のELSI(Ethical, Legal and Social Issues/倫理的・法的・社会的課題)に関する総合的かつ学際的な研究・実践を行なっています。発足から4年目を迎えるELSIセンターでは、学内外の研究者や組織と連携しながら、「社会技術」を多様なステークホルダーと「共創」する、「共創研究プロジェクト」がますます拡大・深化しています。
ELSI Forum 2023では、2023年度、共に研究を進めてきたプロジェクトから3名をお招きし、具体的な事例や率直な課題感を共有いただくとともに、会場に集まった34名(登壇者やELSIセンター関係者を含む)と、責任あるイノベーションに向けて議論を行いました。
<イベント概要>
■ 開催日時:2024年1月12日(金)13:30〜17:00
■ 会場:大阪大学中之島センター 5階
■ 主催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
■ 協力:大阪大学COデザインセンター
■ 後援:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
■ 開催案内ページはこちら:https://elsi.osaka-u.ac.jp/contributions/2595
ELSI Forum 2023は、2部構成で実施しました。第1部では、ELSIセンターとの共同研究事例3件が紹介され、これを踏まえた第2部では、5つのグループに分かれてアカデミア・産業界からの参加者での議論が行われました。
第1部は、大阪大学ELSIセンター 八木絵香 副センター長による、開催趣旨の説明からスタートしました。そこで強調されたのは、ELSIセンターと共創するパートナー同士をつなぐということです。パートナーみなさんが取り組んでいる課題には共通することも多く、パートナー同士がつながることで、それぞれのプロジェクトの研究・実践が発展することが期待されます。
大阪大学ELSIセンター 岸本充生 センター長から、このELSI Forumで中心的に議論するテーマ「企業活動に『責任ある研究・イノベーション(RRI)』の考え方を組み込むには?」の説明があり、各プロジェクトからの事例紹介へと進みました。
以下、講演スライド(PDF)も合わせてご覧ください。
話題提供
「企業活動に『責任ある研究・イノベーション(RRI)』の考え方を組み込むには?」(PDF: 1.7 MB)
岸本充生(大阪大学社会技術共創研究センター センター長/教授)
岸本センター長からは、「責任ある研究・イノベーション(RRI)」の考え方を、研究開発から社会実装までのサイクル全体に拡大していく上で、各企業に共通するテーマが出てきていること、今回は、それらを共有して、どういう「社会技術」(概念・ツール・プロセス)を開発すればいいかを一緒に考えたいとの説明がありました。
事例1
「ELSIに配慮したメディア技術研究:ハンドブックの策定とその活用に向けて」(PDF: 3.2 MB)
宮崎 勝(日本放送協会(NHK) 放送技術研究所スマートプロダクション研究部 研究プロデューサー)
宮崎氏からは、放送技術研究所が公共放送であるNHKの使命をふまえ「ユニバーサルサービス」の研究開発に力を入れていることなど、ELSI研究の背景にあるモチベーションに加え、現在策定している研究者向けハンドブックの概要、ELSI対応を進めていく上での今後の課題が示されました。
事例2
「ELSI・RRIを企業に実装する:研究開発倫理審査の高度化」(PDF: 3.1 MB)
井上 眞梨(株式会社メルカリ mercari R4D Manager)
井上氏からは、研究開発倫理審査プロセスの高度化について紹介されました。研究から実装までを見据えた研究開発倫理指針を策定したこと、当該指針の理解浸透や効果的・効率的な運営を目指して倫理審査の申請フォーマットを作成したこと、今後の展望等が示されました。
事例3
「顔認証が利活用される社会を目指して:顔認証技術の適正利用に向けた「10の視点」の策定と実践」(PDF: 2.5MB)
加藤 英人(日本電気株式会社(NEC) スマートILM統括部 シニアプロフェッショナル)
加藤氏からは、これまでの2件のような研究開発フェイズではなく、ビジネス展開のフェイズにおけるELSIに関する取り組みとして、顔認証技術の適正利用に向けた「10の視点」の策定について紹介がありました。ビジネス構造にまつわる論点も踏まえた説明と、更なる進化に向けた取り組みについて説明されました。
これらの事例を参考にしながら、第2部では、5つのグループに分かれて意見交換を行いました。「責任ある研究・イノベーション(RRI)」を実践する上での、現場への浸透や負担感の問題、人材育成や評価の課題などを皮切りに、人文学的なリソースの活用や、組織文化ごとのアプローチなどが議論されました。
意見交換を通じて、プロジェクトが深化する上で新たにあらわれてくる課題についても、組織文化による違いもありながら、その重なりは大きいことがあらためて認識されました。
第2部終了後のネットワーキングの時間でも、実務者レベルでの話し合いの継続を望む声がきかれました。ELSIセンターとしても、共創パートナー同士をつなぐ取り組みの重要性を実感できる催しとなりました。