人材育成・社会貢献

大阪大学ELSIセンター シンポジウムを開催しました。

2021年3月2日に大阪大学ELSIセンターシンポジウム「科学技術イノベーションと倫理・法・社会」を開催しました。

ELSIセンター設立を記念するシンポジウムの開催は、1年前にも計画されていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大という状況で延期を余儀なくされ、ELSIセンターの設立からもうすぐ一年となるこの春、オンラインという形式でようやく開催することができました。

当日は153名(ELSIセンター関係者を含む)の方にご参加いただきました。

<開催概要>
■開催日時:2021年3月2日(火)14:00〜17:00
■実施形態:オンライン開催
■主催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)

以下、簡単にシンポジウムの内容を振り返ります。

■ 来賓挨拶:中澤 恵太 企画官(文部科学省 科学技術・学術政策局 企画評価課)
シンポジウム開催にあたり、まず、文部科学省科学技術・学術政策局企画評価課の中澤恵太企画官より来賓挨拶をいただきました。科学技術・イノベーション基本計画などの政策の観点から、「政策のための科学」の観点から、そして、大阪や大阪大学の特色という観点から、ELSIセンターへの期待について、お話をしていただきました。

続いて、2件の基調講演です。

■ 基調講演:小林 傳司名誉教授(大阪大学)
小林傳司 名誉教授からは「社会の中の科学、社会のための科学:ブダペスト宣言から20+1年」と題した基調講演をいただきました。
ELSIセンターが取り組む「ELSI」という問題が必要とされるようになってきた社会的背景について、ブダペスト宣言からELSIという視点の形成、また科学技術政策に関する現状やELSIに対する社会的な期待などといった歴史的・社会的な経緯についてお話をいただきました。

*当日の説明スライド(PDF)をご覧いただくことができます。
社会の中の科学、社会のための科学 ブダペスト宣言から20年(PDF: 3.8MB)

■ 基調講演:堂目 卓生教授(大阪大学社会ソリューションイニシアティブ長/ELSIセンター 教授)
大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)長であり、そして、ELSIセンターの兼担教員でもある堂目卓生教授からは、「命を大切にする社会を目指して――社会ソリューションイニシアティブ(SSI)の理念と活動」と題した基調講演をいただきました。
社会ソリューションイニシアティブ(SSI)というシンクタンク機能をもった組織の紹介と、SSIとELSIセンターの関係やELSIセンターに期待していることについてお話をいただきました。SSIは社会の課題に取り組み、いまから約30年後の2050年までに課題を解決することを目指して研究活動を進めており、とりわけ課題解決のための先端技術の利活用といった視点や目指したい社会の在り方などの視点がELSIセンターと共有できるのではないか、との期待を寄せていただきました。

*当日の説明スライド(PDF)をご覧いただくことができます。
命を大切にする社会を目指して 社会ソリューションイニシアティブ(SSI)の理念と活動(PDF: 2.4MB)

■ ELSIセンターの概要説明
休憩を挟んだ後、ELSIセンターの岸本充生センター長からELSIセンターの概要とこれまでの活動について紹介させていただきました。

■ パネルディスカッション
シンポジウム後半では「AIネットワーク社会の共創に向けた倫理・法・社会」と題してパネルディスカッションを行いました。パネルディスカッション冒頭では、まず3名のパネリストから話題提供をいただきました。

一人目はArithmer株式会社代表取締役兼CEOである東京大学数理科学研究科の大田佳宏特任教授です。
Arithmer株式会社で取り組まれている、人工知能やその他の数理的手法、そしてドローンなどの先端技術の応用実例や社会からの期待についてご紹介いただきました。

*当日の説明スライド(PDF)をご覧いただくことができます。
Arithmer AI Systems(PDF: 1.2MB)

二人目は名古屋大学大学院情報学研究科の久木田水生准教授です。
「リスク社会の新たな局面」と題して人工知能に関する倫理的な問題、とりわけ人を対象とするリスク分析の持つ弊害についてご紹介いただきました。

*当日の説明スライド(PDF)をご覧いただくことができます。
リスク社会の新たな局面(PDF: 376kB)

三人目は大阪大学法学研究科研究科長で、ELSIセンターの兼担教員でもある中山竜一教授です。
「ELSI研究を不可避とする思想史的背景」と題して、思想史的な観点から、現代におけるリスクの変容とその社会的受容がもたらすELSI研究の必要性に関してご見解をご紹介いただきました。

*当日の説明スライド(PDF)をご覧いただくことができます。
ELSI研究を不可避とする思想史的背景(PDF: 453KB)

こちらの3名の先生方に加えて、基調講演をいただいた2名の先生方を加えたパネルディスカッションが行われました(モデレーター:岸本センター長)。

パネルディスカッションは、「実際にプロダクトを開発・提供する側から、倫理学者や法学者の議論に対するコメントをお願いします」という岸本センター長から大田教授への質問から始まり、AIを使うことのリスクだけでなくAIを使わないことのリスクをどう考えるか、自由意志ある人間という見方についてどう考えるか、時代によって変わる価値観についてはどうか、等々といった論点が触れられ、予定された時間が短く感じられるほど充実した議論が交わされました。

最後にELSIセンターに期待することについてそれぞれのパネリストからコメントを頂きました。
中山教授からは社会の様々な営みをファシリテートするという法の働きを生かすかたちでの活動への期待を、久木田准教授からは過剰ではない「いい具合の」規制のためのうまい調整役としての期待を、大田教授からは技術による社会課題の解決のための方向提示に関する役割への期待を寄せていただきました。
また、小林教授からは知識欲とその弊害について真剣に悩んで欲しいとの期待を、堂目教授からは社会や我々の在り方を踏まえた社会のための科学の在り方を示してくれることを期待したいとのコメントをいただきました。


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