人材育成・社会貢献

人材育成 ELSIセンター研究会

ELSIセンター研究会「シリーズ ELSI人材像を考える #2 『ELSI人材』はどこで・どのように育成されるのか-ライフサイエンス領域における人材育成」@オンライン が行われました。

2021年10月18日、ELSIセンター研究会「シリーズ ELSI人材像を考える#2 『ELSI人材』はどこで・どのように育成されるのか-ライフサイエンス領域における人材育成」@オンライン が開催されました。

シリーズ第2回では、「ELSI人材」がどこで・どのように育成されるのか、ということを考えるため、大阪大学大学院医学系研究科の加藤和人教授をゲストとしてお招きしました。京都産業大学の川上雅弘准教授、大阪大学ELSIセンターの水町衣里特任講師による指定討論をはじめ、参加者の皆様と共に「ELSI人材」の育成拠点やその在り方について活発な議論を行いました。

当日は、登壇者や運営スタッフを含め34名が参加しました。

 

 

<研究会概要>
■ 2021年10月18日(月)13:00〜15:00
■ 実施形態:オンライン開催(招待制)
■ ゲスト:加藤和人(大阪大学大学院医学系研究科 教授)
■ 指定討論者:川上雅弘(京都産業大学生命科学部 准教授)、水町衣里(大阪大学ELSIセンター 特任講師) 
■ 司会:鹿野祐介(大阪大学ELSIセンター 特任研究員)
■ 主催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
■ 開催案内ページはこちら

司会の鹿野特任研究員による本研究会の趣旨説明の後、ゲストの加藤教授に「ELSI人材を育てるとは−試行錯誤の25年を振り返って」と題して話題提供をしていただきました。

加藤教授は、京都大学理学研究科、岡田節人教授の元で分子発生生物学を学ばれ、ケンブリッジ大学 John B. Gurdon教授の研究室で4年間ポスドクとして研究に従事されました。その後、「科学を広く見渡し、社会と関わる仕事がしたい」という思いから、帰国後、ラボ生活を飛び出し、当時新設され岡田節人さんが館長、中村桂子さんが副館長を務めていたJT生命誌研究館(サイエンスコミュニケーション&プロダクション部門)に着任されます。クローン羊のドリーが生まれるなど、生命倫理に注目が集まっていた時代です。

2001年には京都大学人文科学研究所に赴任され、2004年に生命科学研究科の教員を兼任、さらに2007年からは京都大学に設置された世界トップレベル研究拠点(WPI)物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)の連携教員を担われました。「本物の科学への窓」として社会と関わることを希求したいという考えのもと、大学でこれらの組織の運営をされながら、トップクラスの科学者からの要望に応え、国際的なプロジェクトに参画し、多くの若手研究者を積極的に登用されてきました。

現在は、大阪大学大学院医学系研究科 医の倫理と公共政策学分野において、生命科学・医学・医療を対象に倫理的・政策的課題に取り組まれています(研究室のウェブサイトはこちら)。これらの軌跡を通じて加藤教授の研究室に所属し、「通過していった」研究者の数は約60名にも上ります。

多様な組織において研究グループを運営し続けてきた加藤教授は、これまで達成できたこととして、サイエンスや医学の側でELSIを研究できるグループを維持し続けたこと、国内外の科学・医学のトップレベルの研究者やELSIの専門家たちと連携できたことなどを挙げられました。また、今後の課題として、ELSIに関わる研究者の国内外でのネットワークづくりを、そして、境界領域で研究に従事することの面白さと重要性をより広く伝えることの必要性を提起されました。

後半は、川上准教授、水町特任講師を交えた指定討論から始まりました。まず川上准教授から、所属する学部が目指す学際的な教育や研究に取り組むなかでの課題や問題意識を踏まえて、「理系学部の学生がELSIに関心を持つきっかけをどのように作るべきか」、「他学部連携はどのように進めることができるか」といった学部教育におけるELSIの扱いについて議論がなされました。続いて、水町特任講師からは、公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)で運営している大学院生向けの教育プログラムのミッションと重ねつつ、「ELSI人材のネットワークをつくりたいとお話しされていたが、それはどういうイメージのものなのか」、「サイエンスや医学の側でELSIを扱う研究室を持つということと、人文社会科学の側でELSIを扱う研究室を持つことには、どのような違いがあるだろうか」など、ELSIを扱う拠点の役割と方向性について議論がなされました。

全体討論では、参加者も交えて、実際の人材育成の現場と施策としての人材育成の乖離や、科学の科学らしさなど、より広範な話題について議論が行われました。また、大阪大学ELSIセンターを含め国内外のELSIの研究拠点が増加しつつある中で、より強固なELSI人材のネットワークを築いていく必要性や、交流会の実施提案など、今後の展開的展望も提示されつつ、研究会は幕を閉じました。

ELSIセンターでは、今後も引き続き「ELSI人材」を捉えるための協働・共創の場を実施していきます。

 

【ELSIセンター研究会「シリーズ ELSI人材を考える」について】
第3期科学技術基本計画(2006〜2010年)以降、日本でも科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI : Ethical, Legal and Social Issues)への視点や対応、そしてそれらを担う人材育成の重要性が指摘されてきました。しかし、日本国内では未だELSIを見据えた人材育成の明確なヴィジョンは明確化されていません。このような背景のもと、大阪大学ELSIセンターは、「ELSI人材」の創出・育成というミッションを掲げ、多様なELSI教育プログラムの開発を目指しています。

ELSIセンター研究会「シリーズ ELSI人材像を考える」は、公益財団法人トヨタ財団特定課題プログラム『先端技術と共創する新たな人間社会』「『MELSIT』というヴィジョン―領域横断的な『ELSI人材』モデルの共構築と人材育成 の協働設計―」の一環として、次代のELSIを担う人材である「ELSI人材」の創出・育成に向けて、新規科学技術のELSIをめぐる様々な分野で活躍される方々に、日本の社会に輩出されるべき「ELSI人材」像を問いかけ、明らかにすることを目的として企画しているものです。


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