ELSIセンター研究者インタビュー 赤坂 亮太 准教授

2021年5月14日 掲載

Profile

赤坂 亮太

大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)准教授
1983年生まれ、東京都出身。産業技術総合研究所特別研究員などを経て、2020年4月より現職。学生時代から情報技術に関わる法・制度に関する研究を行ってきた。2012年にテレイグジスタンスロボット「TELESAR V」に出会い、ロボットが社会進出した時の責任問題を中心に研究活動を行いながら、ロボット法学会設立準備会を組織するなど、幅広い観点からロボットと法が関わる場面に関する研究に携わっている。

2020年12月、ムーンショット型研究開発事業「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」がスタートしました。このプロジェクトに参画する 赤坂 亮太 准教授にお話を聞きました。

ご自身の研究について、教えてください。

私は中学生、高校生の頃、ロボットやインターネットに夢中になりました。それで情報技術を学びたくて大学に入ったのですが、大学で学ぶうち、そのような情報技術がさまざまな制度や法律と深い関わりをもっていることに気づき、法学の道に進もうと思いました。振り返ると「大好きなロボットを世に広めるために何か自分にできることはないだろうか」と考えたのが、研究者としての原点だと思います。

2012年、私は、遠隔操作ロボットの一つであるテレイグジスタンスロボット「TELESAR V」に出会いました。「TELESAR V」は、ヘッドマウントディスプレイをかぶりグローブをはめて遠隔操作します。操作している人は、ロボットが見ている景色が見えたり、ロボットが聞いている音が聞こえたりするだけでなく、物を触ったときの感覚、例えば、でこぼこしている、ザラザラしているという感触や、熱い、冷たい、という温度までロボットをとおして感じることができるのです。

私はこの技術を目の当たりして、我々の「人」というものの捉え方が大きく変わっていくだろうと感じました。「TELESAR V」のような遠隔操作ロボットが選択肢のひとつとして社会に存在するようになると、私たちは今までできなかったことができるようになります。たとえば、海外にいる人が日本の工場にあるロボットを操作して働く、というようなことも可能になりますよね。働き方や医療や福祉など、社会のあらゆることがこのような技術によって大きく変化するでしょう。

一方、ロボットという「人間の分身」を作り、いろいろなところで動かす、つまり、ロボットが身体と同じような役割を果たすようになると、私たちが生活する上で拠り所となる法にとって非常に大きな問題をはらんでいます。そのような未来では、現在の刑法において明確に分けられている「人を傷つけること(傷害)」と「物を傷つけること(器物損壊)」の境目は曖昧なものになるかもしれませんし、複数の人が一つのロボットを操作したり、逆に複数のロボットを一人で操作したりするような状況では、「人格と肉体は一対一で対応している」という近代法がある程度前提としていた考え方が揺らぐかもしれません。

私は研究を通し、ロボットのような新しい技術を社会の中にうまく溶け込ませたいと考えています。そのためには、様々な視点や新しいアイデアも柔軟に取り入れる必要があります。例えば、欧州の新たな規制や、日本法とは大きく考え方の違う英米法とも対比することによって日本法においてどのような方策があるか考える、ということにも取り組んでいます。

プロジェクト「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」では、どのようなことに取り組むのでしょうか。

これは慶應大学の南澤孝太教授が代表を務めるプロジェクトで、サイバネティック・アバター技術の開発に取り組むことを目指しています。人々を身体、脳、空間、時間の制約から開放し、その能力を最大限に発揮できるようにするのがこの技術の最終的な目標です。サイバネティック・アバター技術には、遠隔操作ロボットも含まれています。「TELESAR V」の延長線上にある技術ですね。病気などの理由で身体を動かすことができない人がカフェのロボットを操作して接客する、という事例がすでに生まれており、今回のプロジェクトではそのような事例に関わっている研究者や実務家とも連携して研究を行います。

ロボットだけでなく、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、その場にいなくてもその場にいることと変わらない感覚や経験を共有するといった技術や、身体、脳の機能を拡張するサイボーグ(義体)技術も、このプロジェクトの研究対象です。コンサート鑑賞やスポーツ観戦に3Dアバターで参加したり、加齢や病気のために衰えてしまった能力を技術で補ったり、ということが近い将来実現するでしょう。

このプロジェクトで重要なのは、技術そのものの開発にとどまらず、この技術によって感覚や経験、技能を相互に利活用する社会になった場合、制度的・倫理的課題としてどのようなものがあるのかということについて検討し、制度設計に落とし込んでいく点です。

たとえば、遠隔操作ロボットが何らかの事故を起こす可能性も考えられますよね。事故が起こったとき、そのロボットを開発した人、操作していた人、その事業サービスを提供していた人など、それぞれがどのような範囲で責任を負うのか。また、このような新しい技術が社会に急激に普及していく未来を考えたとき、強い不安を感じる人も多くいるでしょう。

私の役割は、来るべき近い未来に想定されるこのような課題を法的に検討することです。社会のすべての事象は法に関わっており、法に関するテーマは非常に多様です。法という切り口で安心できる社会をデザインすることで、社会に貢献していきたいと考えています。

以上

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