ELSI NOTE

掲載日:2025年11月6日 最終更新日:2025年11月6日

ELSI NOTE No.63

AI時代のパーソナルデータ利活用の勘どころ

執筆者:辻村 千尋、山口 あをい、岡村 和男、岸本 充生

執筆者からのひとこと

「あなたの健康データを事業に活用させてください」――そう言われたとき、何があれば安心して提供できるでしょうか?
多くの人は「誰が使うか」「何に使うか」を気にします。でも、具体的に「どんな条件なら大丈夫」とひとつの答えを示せるほど、この問題はシンプルではありません。データ利活用をめぐる議論が、「リスクがあるので慎重に」という声と「データを活かさないともったいない」という声の間で揺れ続けているのも、そのためです。

大阪大学では、データ利活用実証事業(MYPLR)を通じて、この難問に実践的に向き合ってきました。実際にデータを提供してくれた人々と対話を重ね、システムを作り、実証事業をやってみるプロセスで、データを安心して利活用するための「信頼」の重要性が改めて浮かび上がってきました。そしてその信頼は、個人の感覚に頼るだけでなく、「仕組み」として設計できるということもまた、分かってきました。

本稿では、仕組みづくりのための「勘どころ」を紹介します。データ利用を始める前にリスクを評価する「プライバシー影響評価」と、本人が後からでも「嫌だ」と言える「新しい同意モデル」。この組み合わせが、個人も事業者も社会も、みんなが納得できる仕組みを作る鍵になります。

データ利活用に関心を持つ方々の、最初の一歩を後押しできれば幸いです。

大阪大学学術情報庫OUKA


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