人材育成・社会貢献

人材育成

ELSI人材育成〜大学院生を対象とした教育プログラム「公共圏における科学技術政策」(2)

ELSIセンターでは、ELSI教育プログラムを開発し、学内のみならず、産業界や行政機関などへも展開し、「ELSI人材」を創出することをめざしています。

公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)」は、科学技術に関わる社会的な課題について、専門外の人びとにどのように伝えるべきか、どのような知識に基づいて考えるべきか、課題解決に向けた公共的な意思決定に誰が参加するべきかを、科学技術コミュニケーションや人文学・社会科学の観点から学ぶことができるプログラムです。大阪大学大学院生が履修できる副専攻プログラム、高度副プログラムの1つとなっています。

今回は、授業科目の1つである「科学技術コミュニケーション入門B」について紹介します。

「科学技術コミュニケーション入門B」は、大阪大学の全学部生・全研究科大学院学生を対象としています。本センターの八木絵香 教授と、水町衣里 特任講師が担当教員です。

この科目の学習目標は、「専門知と社会をつなぐ仕事に関心のある学生が、自らの専門性に引き付けた上で具体的なキャリアイメージを獲得し、記述できるようになること」と設定しています。具体的には、科学技術コミュニケーションとよばれる分野の第一線で活躍するゲスト講師を順にお招きし、それぞれの方がどのようにキャリアを形成してきたのかを伺いながら、専門知と社会をつなぐためにどのような役割が必要なのか、といったことを議論するという内容になっています。

  • 授業スケジュール:
    第1回   イントロダクション
    第2〜6回 ゲスト講師による話題提供と参加者との議論
    第7回   振り返りと総合討論

*ゲスト講師をお招きした5回分に関しては、セミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2020年度夏)」としても実施し、履修登録者以外の学生や教職員の参加も可能としていました。

例年、マスメディアや研究機関、行政機関といった多彩な現場で活躍されているゲストをお招きしています。2020年度の夏学期は、新型コロナウイルスに向き合わざるを得ない状況で、「つなぐ人たち」がそれぞれの立場でどのような活動をされているのか、を学ぶべく、以下のような方々に登場していただきました。

#1 6月23日(火)日本科学未来館/科学ライター・詫摩雅子さん
展示パネル「わかんないよね新型コロナ」や日本科学未来館と国立国際医療研究センター国際感染症センターとのコラボ企画、ニコニコ生放送ニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ だからプロにきいてみよう」の仕掛け人の1人です。これらの企画の裏側をお話しいただきました。

#2 6月30日(火)兵庫県立人と自然の博物館・三橋弘宗さん
2017年夏に話題となったヒアリ侵入時には、専門家のネットワークを生かし、多様な知見を取りまとめた要望書を作成して危機管理の支援などに努めた方。今回の新型コロナウィルスの課題はどう見えるのか、お聞きしました。

#3 7月7日(火)朝日新聞 科学医療部 記者・合田禄さん
これまで、再生医療、医療事故、研究不正などを担当し、4月からは新型コロナの医療・科学に関する記事を執筆されています。マスメディアが果たすべき役割とは何か、「つなぐ人」の重要性とは、といったことなどを考えました。

#4 7月14日(火)京都大学iPS細胞研究所 国際広報室・和田濵裕之さん
普段は、iPS細胞研究と社会をつなぐというお仕事をされている方ですが、最近では新型コロナウイルスに関する情報発信やお問い合わせへの対応もされています。刻々と移りゆく状況をどのように捉え、何に気をつけながら発信することが望ましいのか、などお話しいただきました。

#5 7月21日(火)科学コミュニケーター(フリーランス)・本田隆行さん
フリーランスの科学コミュニケーターという日本ではとても珍しい立ち位置の方です。この状況の中、科学コミュニケーターの役割とは?と日々もやもや考えていることを共有していただきました。

*それぞれの回のウェブページには、受講生が主に執筆した開催レポートが掲載されています。ぜひご覧ください。

最終回には、ここまでのゲスト5人と受講生とが集い、「つなぐ人たちの働き方」を振り返りました。受講生からゲストのみなさんに改めて聞いてみたい質問として、「(新型コロナウイルスについて)刻々と変わっていく状況で、いま、何を発信すべきなのだろうか?」や「コロナ前のもともとのお仕事にはどのような影響が出ているのか?」などがあがっていました。ゲストどうしで話してみたかったことも共有するうちに、あっという間に90分が経っていました。

この科目を履修していた学生からは、次のような感想が寄せられました。

  • 一つの話題に対してさまざまな視点からの意見が得られたのが有意義だった。仕事内容・業種によってこうもコミュニケーションの仕方が異なるのかと驚いた。自分の持ちうるコミュニケーション能力によって、向いている・向いていない「つなぐ人」の形があるのだろうとも感じた。
  • ゲストの方同士の質問や八木先生との対話からは、科学を受け身で学んできた私には思いつかないような考えなどを聞くことができ、面白かった。とても楽しくて、これからのキャリアについて新たな選択肢を得ることのできる授業だった。

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