ELSI人材育成〜大学院生を対象とした教育プログラム「公共圏における科学技術政策」(1)

2020年4月15日 掲載

ELSIセンターでは、ELSI教育プログラムを開発し、学内のみならず、産業界や行政機関などへも展開し、「ELSI人材」を創出することをめざしています。

 

公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)」が大阪大学で提供している教育プログラム「公共圏における科学技術政策」は、科学技術に関わる社会的な課題について、専門外の人びとにどのように伝えるべきか、どのような知識に基づいて考えるべきか、課題解決に向けた公共的な意思決定に誰が参加するべきかを、科学技術コミュニケーションや人文学・社会科学の観点から学ぶことができるプログラムです。大阪大学大学院生が履修できる副専攻プログラム、高度副プログラムの1つとなっています。

教育プログラムのキーワードは「科学技術と社会をつなぐ」です。

 

今回は、「公共圏における科学技術政策」の入門必修科目として設定されている「社会の中の科学技術概論」について紹介します。

「社会の中の科学技術概論」は、大阪大学の大学院生を対象とした授業科目です。文学研究科、経済学研究科、理学研究科、基礎工学研究科、生命機能研究科など、多様な学生が受講しています。本センターに兼担教員として参画しているCOデザインセンターの平川秀幸教授らが、授業を担当しています。

この科目は、例年であれば、ELSIに関連するテーマを対象に、ゲストレクチャー(90分)と学生同士のグループディスカッション(90分)とがセットになった講義・演習を行うスタイルで運営されていますが、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、その方法とテーマを変更して開始されました。

2020年度「社会の中の科学技術概論」を通じて議論するテーマは、「新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナ)とその対応の現在と将来について」です。疾患としての新型コロナのリスクへの不安だけでなく、事業や生活の見通しが立たない経済リスクへの不安も広がっているなか、日本でも2020年4月7日に7都道府県に対して緊急事態宣言が発表されました(授業を開始した2020年4月15日段階)。そこでこの講義では、今現在進行中の新型コロナについて、特に日本の状況に焦点をあげて、国や自治体、医療、専門家、報道、事業者、個人が直面している政策や医療体制、仕事、生活、コミュニケーション等における問題点をELSI の観点から多角的にとらえ、どのような対応が取られるべきだったか、取られるべきか、社会や個人の課題について考えていきます。

緊急事態宣言下、自らの生活にも制限がかかる中で、受講生たちはどのようなことを感じ、何に問題意識を持っているのか。教員側と問題意識を交換し、相互コミュニケーションをとりながら授業が進むことも、今回の授業の特徴です。

 

第一回目の授業では、ビデオ会議システムを使って、教員、受講生がお互いの専門の紹介と「新型コロナ問題で気になっている問題」について共有しました。

  • SNSなどを通じた情報の流通のあり方
  • 人々が科学的には定かではないとされる情報を信じてしまうメカニズム
  • 研究者の提言と、政治的決定の乖離
  • 複雑な問題が絡み合う中で、さまざまな専門家が連携することの難しさ
  • 国民への補償のあり方、特に、社会的弱者への支援のあり方
  • 外出自粛は必要である一方、経済悪化によって自殺者数が増加することに対する懸念
  • 増産されたマスクは、どこに、どのような基準で配布されているのか
  • PCR検査についての一般の人々と医療従事者・研究者との認識の差を、どうすれば埋めることができるのか
  • 現在の法制度のもとで日本がより拘束力の強い対応をする可能性があるのか
  • 新型コロナが収束した後、どのように国際情勢が変化しているのか
  • 今後学校を子どもたちの成長のためのより良い場所にしていくために、どうすべきか
  • リモートワークが増えるなど、生活様式が強制的に変えられてしまったあとの社会がどうなるのか

2020年度も、多様な背景や興味関心をもつ大学院生たちが集まりました。オンラインだからこそ、密度の濃い授業を目指していきたいと、平川教授は語ります。

教育プログラムの詳細については、ウェブサイト(http://stips.jp)をご覧ください。


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