人材育成・社会貢献

「ディザスター・ハッギョ2023 Act 3」を開催しました。

2023年7月31日から8月8日にかけて、韓国科学技術院(KAIST)Science and Technology Policy Departmentと共に、国際研究イベント「ディザスター・ハッギョ2023 Act 3」を開催しました。

ディザスター・ハッギョとは、グローバルなスケールで展開する災禍に関する新しい研究アプローチを探究するために2022年から継続的に開催されている研究イベントで、2023年のイベントのうちAct1とAct2は韓国のKAISTで開催されました。Act3は日本に舞台を移し、仙台、福島、石巻、広島にある災禍の記憶を今日にとどめる現場を訪れ、そうした災禍を生き延びた人々の証言に耳を傾け、人々の経験から何を学べるかを議論しました。

国内外の研究者とセウォル号事故遺族など25名がサイトビジットと研究ワークショップに参加しました。

<研究会概要>
■ 開催日時:2023年7月31日(月)〜8月8日(火)
■ 主催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)、KAIST Science and Technology Policy Department
■ KAIST側の開催案内ページはこちら:https://disasterhaggyo.com/?page_id=520

 

「ディザスター・ハッギョ2023 Act 3」の行程は以下の通りです。
7月31日〜8月5日:
・せんだい3.11メモリアル交流館へのサイトビジット
・東日本大震災・原子力災害伝承館のサイトビジット
・せんだいメディアテークでの災禍の記憶に関する研究ワークショップ
・石巻市大川小学校・門脇小学校遺構のサイトビジット

8月6日〜8月8日:
・広島市平和記念式典への参列
・NPO法人ワールド・フレンドシップ・センターによる被爆者講話への参加
・本川小学校平和資料館・広島女学園・基町プロジェクトへのサイトビジット
・広島市立大学サテライトキャンパスでの原爆の記憶の政治に関する研究ワークショップ

 

前半は、東北を訪問しました。仙台市にあるせんだい3.11メモリアル交流館へのサイトビジットを皮切りに、仙台を拠点としながら福島の東日本大震災・原子力災害伝承館と請戸小学校、石巻の大川小学校と門脇小学校を訪ね、周辺で家族を亡くされた遺族の方や長期避難を余儀なくされた方の経験談を共有しました。

また8月3日に、せんだいメディアテーク スタジオシアターで開催された研究ワークショップでは、3がつ11にちをわすれないためにセンター(わすれン!)の活動についての紹介をいただいたあと、わすれン!の協力を得て作成されたドキュメンタリー『飯舘村に帰る』の上映会を行いました。さらにセウォル号事故遺族たちが中心となった記憶継承の試みの紹介や、南三陸や石巻の津波被災者の経験に照準した研究報告やトークがなされたあと、これらの当事者たちの試みの間にある共通性と差異について議論がなされました。特に日韓のさまざまな災禍を通じて「災禍を防げなかった責任を問う」という契機が全てのケースにおいて前景化されるわけではない(特に日本のいくつかのケースにおいてそうした契機が弱いように見える)のはなぜかという問いが提起されました。

後半は、広島を訪れました。原爆投下の時間に合わせて毎年開催されている平和記念式典に参列し、NPO法人ワールド・フレンドシップ・センターが主催する被爆者講話会への参加と、本川小学校平和資料館と基町プロジェクトへのサイトビジットを行いました。人々の記憶の語り、残された遺品、被害を再現する模型の配置といった様々な手段を通して、戦後79年の時間を隔てた現在にまで被爆経験を継承するさまざまな実践について学んだあと、広島市立大学サテライトキャンパスで行われた研究ワークショップでは、原爆投下の記憶のされ方についての日本とアメリカの差異に関する発表や、韓国人被爆者の困難について焦点を合わせたトークが行われ、冷戦の始まりと終わりを含む政治的な力学がある災禍がどのように記憶されるのかを形作るプロセスについて議論が交わされました。特に議論の焦点になったのは、被爆者の語りにおいて唐突に挿入される悪夢についての語りに見られるような、長い時間を経ても生々しさを保っているサバイバーの語りをどのように引き継いでいくことができるかという問題でした。

日本と韓国にまたがる様々な災禍の経験を取り上げるだけでなく、そうした災禍についての日本、韓国、アメリカの研究者や当事者たちが持つさまざまな認識や意見についてお互いに議論する時間を持つことで、新しいDisaster Studiesの研究の方向性とコラボレーションの可能性について展望することができました。


人材育成・社会貢献に戻る