人材育成・社会貢献

シンポジウム 「研究倫理審査をアップデートする:ELSI/RRIを組み込んだ技術開発・社会実装の作法」を開催しました。

2023年12月9日に、大阪大学ELSIセンターが共催するシンポジウム 「研究倫理審査をアップデートする:ELSI/RRIを組み込んだ技術開発・社会実装の作法」(主催:科学技術社会論学会 第22回年次研究大会実行委員会)が行われました。

このシンポジウムは、科学技術社会論学会 第22回年次研究大会の一環として行われたものです。

生命・医科学領域のみならず人文・社会科学領域、さらには企業における活動も視野に入れ、パーソナルデータの利活用やAIの適用がますます広がる中で、研究倫理審査の現状や課題について参加者のみなさんと共有し、研究から研究成果の社会実装までを視野に入れた「責任ある研究・イノベーション(RRI)」を実践するために研究倫理審査が果たすべき役割について検討することを目的として、開催しました。

当日は、学会参加者 約100名(登壇者や関係者を含む)が会場に集い、そして、約80名のみなさまに配信を視聴いただきました。

 

<イベント概要>
■ 開催日時:2023年12月9日(土)13:30〜15:30
■ 実施形態:会場(大阪大学豊中キャンパス 基礎工学国際棟シグマホール)からのYouTube Live での配信
■ 主催:科学技術社会論学会 第22回年次研究大会実行委員会
■ 共催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
■ 協力:大阪大学COデザインセンター
■ 開催案内ページはこちら:https://elsi.osaka-u.ac.jp/contributions/2469

 

本シンポジウムは、3件の話題提供とパネルディスカッションから構成されていました。
以下、講演スライド(PDF)も合わせてご覧ください。

趣旨説明&話題提供1
「研究倫理審査をRRI(責任ある研究・イノベーション)の中核に位置づける」
(PDF: 2.8 MB)
 岸本充生(大阪大学ELSIセンター センター長/教授)
大阪大学ELSIセンターの岸本教授からは、これまで主に医学系の研究において行われていた研究倫理審査のスコープが、RRIの研究蓄積も踏まえ、アカデミア以外のセクターや、非医学系の研究領域に拡張されつつあるという状況が紹介されました。また、社会実装や研究の長期的影響も見据え、審査対象のフェーズを研究・イノベーションのライフサイクル全体へと拡張する必要性についても言及されました。

話題提供2
「科学技術社会論学会会員の研究倫理審査に関する経験」(PDF: 2.2 MB)
 小門 穂(大阪大学 大学院人文学研究科 准教授)
大阪大学大学院人文学研究科の小門准教授からは、科学技術社会論学会会員を対象に実施されたアンケート調査の結果が紹介されました。非医学系の幅広い分野に広がりつつある研究倫理審査を、多様な分野の研究者がどのように捉えているのかということ、医学系の審査モデルと研究の実態とのギャップがあるということ、など現状の課題が示されました。

話題提供3
「研究倫理審査の現状と課題:大阪大学における現状を例に」(PDF: 1.8 MB)
 鈴木 美香(大阪大学 研究オフィス 講師)
大阪大学研究オフィスで、人を対象とする医学系研究の倫理支援業務を行なっている鈴木講師からは、医学系研究を中心とした米国・日本の倫理審査委員会設置の歴史、大阪大学における研究倫理審査体制の全学的な状況が示され、そもそもの研究倫理審査の目的や意義を確認するとともに、形骸化への懸念などの問題意識が示されました。

 

シンポジウム後半に行われたパネルディスカッションでは、主に「受けたくなる倫理審査」「ライフサイクル全体への拡張」を論点に意見交換が行われました。

会場参加者やライブ配信の視聴者からも多数コメントをいただきました。具体的には、以下の通りです。

  • 生命・医科学領域での研究倫理審査は、多数のガイドラインに基づいて実施されている。非医学系の審査は、何に基づいて審査をすることになるのだろうか。ガイドラインなどがない場合の責任のあり方はどのようなものになるのだろうか。
  • 在野で研究をしている人も、研究倫理審査を受けることができるようにするには、どのような体制を整えればよいのだろうか。
  • 非医学系の研究倫理審査における、科学的妥当性の担保の仕方はどのようなものになるのだろうか。

など。

 

今後も、研究倫理審査のあり方、および研究倫理審査とELSI/RRIの関係について議論を重ねていきます。
この度は、ご参加ありがとうございました。


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