人材育成・社会貢献
ELSIセンター研究会「アート×ELSIを考えるための美学入門」を開催しました。
2023年4月24日に、ELSIセンター研究会「アート×ELSIを考えるための美学入門」を開催しました。この研究会には、登壇者を含めた22名(会場での参加 15名、オンラインでの参加 7名)が参加しました。
今回のELSIセンター研究会は2部構成になっていました。前半は、分析美学者である松本大輝氏による現代の美学の諸論点やメディアと作品の関係についてのレクチャーがあり、後半はレクチャーを踏まえ、論点探索のためのワークショップを行いました。
<研究会概要>
■ 開催日時:2023年4月24日(月)13:00〜15:00
■ 実施形態:オフライン・オンライン ハイブリッド開催
■ 開催案内ページはこちら:https://elsi.osaka-u.ac.jp/contributions/2141
まず、本研究会の企画者の1人であるELSIセンターの長門 裕介特任助教より、今回の趣旨説明があり、続いて、ゲストの松本大輝氏より、芸術やアートという領域固有に生じうる様々なELSI課題を見通す視座について、分析美学の立場からのレクチャーが行われました。
最初に強調されたのは、いかなる社会課題もそれが課題であるからには何らかの規範と関連して生じるという論点でした。現在進行形で続いている生成AIなどの作品を作り出すことのできるテクノロジーの発展に対して、芸術はどのようなものであるべきかという私たちが19世紀以来保持している規範は、相対的にゆっくりとしか変化しないはずです。そうであるとするならば、新しいテクノロジーと旧来の規範が衝突したり、あるいは逆にテクノロジーがこれまでの規範を無理になぞる形で用いられたりすることから、様々な社会課題が生じるのではないかという見通しが語られました。
後半のワークショップ部分は、ELSIセンター 河村 賢 特任助教による進行のもと、どのようなELSI課題が今後生じることが見込まれるか、その過程で浮上したり問い直されたりする芸術に関する規範とはどのようなものかということについて、議論を行いました。
以下のような論点が提示されました。
・NFTのような情報技術が作品の唯一性を担保するという事態が生じるのではないか
・生成AIによって芸術作品を制作することが一般的になるに伴い、作品を生成するプロンプトを書くプロセスが制作の過程として新たにクローズアップされるのではないか
・芸術は既存の価値を転倒すべきという規範が保持される限り、芸術が社会を挑発するという構図のもと芸術作品が炎上するという事態が続くのではないか
ELSIセンターでは、今後もアート×ELSIに関わる企画を実施予定です。