人材育成・社会貢献
ブリュッセル効果への対応:日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか6(1/6)
2026年1月6日に、大阪大学ELSIセンターが後援するウェビナーの開催を予定しております。
大阪大学ELSIセンターの工藤郁子 准教授が登壇します。
ブリュッセル効果への対応:
日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか6
2024年に成立したEU AI法は、AIが生成・編集した文章・画像・動画・音声などについて、利用者がAI生成物であると分かるように表示する「透明性義務(第50条)」を定めています。チャットボットとの対話の明示、合成コンテンツへのウォーターマークやメタデータ付与、感情認識・バイオメトリック分類システムの利用に関する通知、ディープフェイクのラベリングなど、生成AI時代の実務に直結する規定が含まれます。
重要なのは、この義務が特定の大企業やAI開発会社に限定されていないことです。EU AI法は、AIシステムを市場に出す「プロバイダー」だけでなく、それを組み込んでサービスやコンテンツをEU市場に届ける「利用者側(デプロイヤー)」にも義務を課しています。企業のマーケティング・広告・広報部門、メディア・制作会社、プラットフォーム・SaaS事業者に加え、フリーランスのデザイナーや動画クリエイター、インフルエンサー、個人事業主など、商業的・職業的にAIを活用する個人も対象となり得るのが、第50条の射程です。
一方で、純粋に私的で非職業的な「趣味としてのAI利用」はAI法上の義務から除外されます。しかし、スポンサー付きSNS投稿やEU向けオンライン販売、フリーランス案件でのAI活用など、「どこからが職業的利用か」の線引きは必ずしも明確ではなく、第50条の適用範囲は想像以上に広がり得ます。
現在EUでは、第50条の透明性義務を実務に落とし込むための「透明性に関する行動規範(Code of Practice:CoP)」策定が進行中です。CoPは法文そのものではないものの、企業や個人が過度な負担をかけずに法令順守を進めるための事実上の基準として機能することが想定されます。他方で、CoPとは異なる独自運用を選択する場合には、EU AI Officeとの個別調整が必要となる可能性もあり、特に中小企業や個人にとっても看過できない論点を含んでいます。
「自社(自分)は関係ない」と考えてきた方にこそ、第50条のAI透明性義務がどこまで及び得るのか、その射程を確認し、備えを考える機会として、ご参加をお待ちしております。
■ 日時
2026年1月6日(火)14:00-15:00
■ 実施形態
ZOOMウェビナー
■ 詳細
プログラム詳細、申し込み方法などは、東京大学国際高等研究所東京カレッジのウェブページにてご確認ください。
https://www.tc.u-tokyo.ac.jp/ai1ec_event/16409/
■ 主催
東京大学国際高等研究所東京カレッジ
■ 後援
大阪大学 社会技術共創研究センター、日本ディープラーニング協会