イベント開催報告

2021年6月15日 掲載

ELSIセンター研究会「シリーズ ELSI人材像を考える #1 ELSI人材とは何か-科学技術と社会的課題を扱う人材像について」@オンライン が行われました。

2021年6月7日、ELSIセンター研究会「シリーズ ELSI人材像を考える#1 ELSI人材とは何か-科学技術と社会的課題を扱う人材像について」@オンライン が開催されました。

第3期科学技術基本計画(2006〜2010年)以降、日本でも科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI : Ethical, Legal and Social Issues)への視点や対応、そしてそれらを担う人材育成の重要性が指摘されてきました。しかし、日本国内では未だELSIを見据えた人材育成の明確なヴィジョンは明確化されていません。このような背景のもと、大阪大学ELSIセンターは、「ELSI人材」の創出・育成というミッションを掲げ、多様なELSI教育プログラムの開発を目指しています。

ELSIセンター研究会「シリーズ ELSI人材像を考える」は、公益財団法人トヨタ財団特定課題プログラム『先端技術と共創する新たな人間社会』「『MELSIT』というヴィジョン―領域横断的な『ELSI人材』モデルの共構築と人材育成 の協働設計―」の一環として、次代のELSIを担う人材である「ELSI人材」の創出・育成に向けて、新規科学技術のELSIをめぐる様々な分野で活躍される方々に、日本の社会に輩出されるべき「ELSI人材」像を問いかけ、明らかにすることを目的として企画されました。

シリーズ第1回は、科学技術社会論学会の初代会長でもあり、長年にわたって日本国内のELSI研究を牽引してきた小林傳司大阪大学名誉教授をゲストとしてお招きしました。大阪大学ELSIセンターの岸本充生センター長、八木絵香副センター長による指定討論をはじめ、参加者の皆様と共に「ELSI人材」について活発な議論を行いました。

当日は、登壇者や運営スタッフを含め33名が参加しました。

<研究会概要>
■ 2021年6月7日(月)12:00〜14:00
■ 実施形態:オンライン開催(招待制)
■ ゲスト:小林傳司(大阪大学 名誉教授)
■ 指定討論者:岸本充生(大阪大学ELSIセンター センター長/教授)、八木絵香(大阪大学ELSIセンター 副センター長/教授)
■ 司会:鹿野祐介(大阪大学ELSIセンター 特任研究員)
■ 主催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
■ 開催案内ページはこちら

司会の鹿野特任研究員による本研究会の趣旨説明の後、ゲストの小林名誉教授には「ELSI人材とは何か−科学技術と社会的課題を扱う人材像について」と題した講演をいただきました。

日本の科学技術基本計画における科学と社会に関する記述の推移を振り返ると、約20年にわたってELSIを含めた科学と社会の諸問題や、科学と社会の関わり方に関する記述があり、必ずしもその重要性への視座がなかったわけではありませんでした。しかしながら、実際にELSIを見据えた実践に至った事例はライフサイエンス分野の一部を除き、これまでほとんど見られませんでした。最近ではこのような状況に変化が現れ、2020年度からはJSTにおいてELSIのファンディングプログラムが立ちあがったり、ELSIの重要性についての言及が増えたりするなど、“ELSIバブル”ともいえる現象が起こっています。

こうしたELSIに関する実践を含めた研究活動が活性化する状況下で、小林名誉教授は、「ELSI人材育成」のためのグッドプラクティスを重ねるには、理系と文系という大雑把な二分法を見直し、その垣根を緩める必要があるのではないかということを指摘されました。また、理工系の研究科の中に、人社系の問題意識を持つようになった理工系学生が所属して、人社系の研究ができる「駆け込み寺」のような場所を作る必要性にも言及されました。そして、様々な専門性を持つ集団のプロデュースができる人材をどのように捉えるかという問題意識と視点を提示されました。

続く指定討論の時間では、まず岸本センター長から、ELSI人材について「科学と政策、技術と社会実装の間に生じるギャップを事前に予測し、ELSIを発見し、その対処をする存在」という仮の定義が示された上で、「そもそもELSI研究といった時にはどの範囲まで含むのか(例えば、レギュラトリーサイエンスは含まれるのか)」や「個別の内容よりも、プロセスやガバナンスがより重要視される特殊な領域なのではないか」といった論点が示されました。続いて、八木副センター長からは、「つなぐ人材」の育成をミッションとして掲げる公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)での教育プログラム運営経験が紹介された後、「目指すべきは果たしてELSI“人”材の育成なのか。むしろ、ELSIへの万全な対策を期すための“システム”を整えることの方が大事なのではないか」といった問題提起がなされました。

全体討論の時間には、ELSIセンター兼担教員など、参加者も交えて多岐に渡る問題について議論が行われました。例えば、「ELSI人材は、ELSIが生じる個別分野の専門性をどこまで獲得するべきか?」、「ELSIバブルの行く末は?」、「ビジネスの現場でELSIに対応する人へのリカレント教育の可能性は?」などといった検討すべき議題が示されました。

今後も引き続き「ELSI人材」を捉えるための協働・共創の場を実施していきます。

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