イベント開催報告

2021年3月22日 掲載

SpringX 超学校「ビジネスとアカデミアのタッグで挑む、攻めのELSI」第3回 @オンライン が行われました。

2021年3月3日(水)、SpringX 超学校「ビジネスとアカデミアのタッグで挑む、攻めのELSI」第3回を実施しました。

SpringXは、一般社団法人ナレッジキャピタルが運営するスタートアップ支援のための学びと交流の場で、そこで行われているプログラムの1つが「SpringX 超学校」です。2020年度はオンライン配信が中心になっており、ELSIセンターが提供するシリーズ「ビジネスとアカデミアのタッグで挑む、攻めのELSI」もオンライン形式で開催しています。

第3回は、「ELSIというビッグウェーブ、乗りこなせるか? のみ込まれるか?」というタイトルを掲げて実施しました。この日、リアルタイムで配信をご覧になっていたのは63名でした。

<研究会概要>
■ 開催日時:2021年3月3日(水)19:00〜20:30
■ 実施形態:オンライン開催(申し込み制でYouTube Live配信)
■ 主催:大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)、公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)、一般社団法人ナレッジキャピタル


■ ゲスト:
朱 喜哲 氏(株式会社電通関西支社ソリューション・デザイン局 主任研究員/大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)招へい教員)
工藤 郁子 氏(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター プロジェクト戦略責任者/大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター) 招へい教員)

■ホスト
岸本 充生(大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)センター長/データビリティフロンティア機構 教授)

■司会
八木 絵香(大阪大学COデザインセンター/社会技術共創研究センター(ELSIセンター) 教授)

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ELSIセンターでは、技術を生み出す側とそれを受け入れる側の間に立って議論を深めることを、そして、得られた知見を社会にフィードバックすることを目指して研究や活動を進めています。「ビジネスとアカデミアのタッグで挑む、攻めのELSI」の第1回第2回では、ELSIセンターがこれまで協働してきた企業の方々をお招きし、現場を動かしている方たちと、大学、アカデミアの側がどのように協働できるのか、その結果、何が生まれてきたのかということを具体的な事例をもとにご紹介してきました。

今シーズン最終回となる第3回は、ここまでの2回を振り返りつつ、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)をキーワードにしたときに、ビジネスとアカデミアがどのように連携していくことができるのか、また、そこはどのような課題があるのかということを語り合いました。

今回のゲストは、ELSIセンターの招へい教員でもある、朱 喜哲 氏と工藤 郁子 氏です。まずは、それぞれから簡単に自己紹介がありました。

朱 喜哲 氏は、株式会社電通関西支社ソリューション・デザイン局 主任研究員としてデータビジネスに携わる傍ら、大阪大学大学院文学研究科やELSIセンターの招へい教員を務めており、哲学の研究者として「コミュニケーションに関わる哲学」を専門にしています。同時にビジネスの場においてはデータビジネスの専門家でもあり、同領域が抱える複雑性やそれに伴う課題について話題提供がありました

また、2018年頃から「倫理(Ethics)」という言葉がビジネスの世界で注目を集めるようになったこと、それがきっかけでELSIというキーワードと出会い、倫理的な課題を「法的(Legal)」や「社会的(Social)」な課題と区別して比較的わかりやすく説明ができるところに魅力を感じたこと、データビジネスの領域にELSIを適用した研究会を企画し、岸本センター長との出会いにつながったことが語られました。

工藤 郁子 氏は、法学というバックグラウンドをもち、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターで「ELSIというビッグウェーブをつくり、飲み込む」ようなプロジェクトを推進されています。新しい技術の普及は現代のさまざまな危機を回避するために重要な役割を果たす一方で、権力濫用や偏見の助長、格差の拡大や雇用喪失などのリスクも持ち合わせています。新しい技術を統御するためにさまざまな課題と出会い自己変革を迫られる局面において、ELSI的な観点が必要になることが紹介され、もはやこれは世界的な潮流であり遠くから冷ややかに眺めている場合ではないという問題提起がありました。

この後は、ゲストのお二人、ホストの岸本センター長、そして進行の八木教授も加わり、ELSIセンターのこの1年の活動や、ゲストのお二人との出会い、様々な連携について振り返る、4人でのトークセッションが行われました。

2019年3月、ELSIセンター発足前夜に岸本センター長と朱氏は出会い、アカデミア、ビジネス界両方からゲストを招きELSIとデータビジネスについて考える「データビジネスELSI研究会」を立ち上げました。この研究会の中でアカデミアとビジネスの共創の重要性が再確認でき、「ELSI対応なくして、データビジネスなし」など、現在まで続くコンセプトが生まれたそうです(ウェブ電通報に掲載された岸本センター長と朱氏の対談はこちら)。

2020年4月にELSIセンターが発足すると、速報的に国内外のELSIに関する研究・実践活動の最新動向を紹介する媒体としてELSIノートが発行されるようになり、その第4弾として岸本センター長と工藤氏が「接触確認アプリとELSIに関する10の視点」を発表しました。社会的関心・社会的影響が大きい事柄に対して迅速に反応しアカデミアが第三者的な視点からレビューする重要性や反響の大きさを実感されたとのことです。

工藤氏からは、「ELSIといってもただ1つの答えや価値があるわけではない。それぞれが大切に思っているところもあれば、第三者的な立場からどう見えるかということを政府や企業も知りたいと思っているのではないか。より健全な形で均衡を図っていくのがあるべき姿ではないか」というコメントもありました。

また、「企業の中で誰が倫理(Ethics)的な観点を担当するべきか?」という問題については、担当の部署を作る、倫理学者が個人で担当するというよりもプロセス全体を横断的に見るプロセスを確立するべきではないかという意見や、アカデミアが第三者的に批判ばかり行ったり、企業がアカデミアにお墨付きだけを求めたりするのではなく、コミュニケーションの往復を重ねることによって(=監修ではなく共創によって)問題を考えていくべきだというコメントがありました。

今回のテーマでもある「攻めのELSIとは何か」について、「何かが起こったときに事後的な対応をするのではなく、企業としてどうありたいか意思を示す能動的な姿勢が『攻め』という言葉につながる」「第三者的に関わろうとするのではなく、チームの一員、当事者として貢献することが『攻めの姿勢』なのではないか」というゲストからのコメント、さらにはそれを受けて八木教授から「『攻める』というよりむしろ、ELSIという概念を共に『つくる』ということなのではないか」という意見も出されました。

最後にELSIセンターの今後の展望について、岸本センター長から「人文社会科学、特にELSI周りでの産業界・行政との共創を積極的に広げていきたい」という今後の展望が語られ、幕を閉じました。

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SpringX 超学校「ビジネスとアカデミアのタッグで挑む、攻めのELSI」、第1回と第2回の開催レポートもぜひご覧ください。

第1回「ELSIを意識した、データビジネスのためのガイドライン」(2021年2月1日開催)

第2回「メルカリR4D が目指す“レスポンシブルな”研究開発スタイルとは?」(2021年2月17日開催)

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